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貸本屋の尻。

by gogomon

中学の頃に通っていた塾の近くに貸本屋があった。「貸本屋」というのは僕の時代にはすでにほとんどなくなっていたので、珍しかった。漫画が主で、メジャー作品のほか、手塚治虫作品、ガロ系、水木作品、つげ作品などがあった。確か50円くらいで借りられたと思う。

ガロ系を借りると、店主は「僕こんなん好きか」と喜び、「コレも貸したるわ」と、おまけで色々貸してくれた。ある時、店に入るとおじさんのカウンターの下のモニターがチラッと見えた。女の尻が映っていた。どうやらこの店は、裏ビデオ販売が隠れた収入源だったようだ。

漫画を借りに来た大人に「こういうのもあるけどね」と小声で言ってるのを聞いたことがあった。でも、おっさんは僕ら子供にはいい漫画をたくさん教えてくれた。エロ漫画もあったけど、冗談でも手に取ると「10年早いねん!」と怒られた。

ある時、本を返しに行くと、おっさんが聞いたことのない言葉で、やくざ風の男と怒鳴りあっていた。在日の友人の家で聞く穏やかな朝鮮語ではなく、ドスの効いた怖い朝鮮語だった。

僕の視線を感じたおっさんは、やくざにつぶやいた。
「子供が来たからまた後で来い」と言ったんだと思った。
おっさんはやさしい笑顔を作っていたけれど、何処か笑顔はこわばっており、普通じゃなかった。

僕は本を返すと、店を後にした。
ぼく、今日は借りテケへんのかと、僕に言った。
おっさんの関西弁がちょっとだけ変に聞こえた。僕はうん、また今度にするわと自然を装って答えたけれど、やはり僕も普通じゃなかった。

しばらくして、店はなくなっていた。おっさんはなにを怒鳴っていたんだろう。やくざより高圧的だったのはなんでだろう。大人になった今、思い返してもわからないことはたくさんある。


gogomon
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