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松方弘樹と運転免許。

by gogomon

僕が運転免許証を取ることができたのは松方弘樹さんのおかげだ。

25歳の時、免許を取ることにした。
通うのが面倒くさかったので、合宿免許にした。
北陸の教習所だった。
冬休みの合宿シーズンと重なった教習所はヤンキーだらけだった。
高校卒業を見込んだ地方のヤンキー。
地元のヤンキー。
どこかのヤンキー。
「この世にはヤンキーしかいないのか」というほど、ヤンキーだらけだった。
やはり、免許証というのはヤンキーに必要なのだろう。
会話は車、女、パチンコの話がほとんどだった。

だけど、ヤンキーの人たちは、みんないい人だった。
僕は彼らより年上だったし、パキスタンやチベット、ケニアに行ったときの話をすると、とても喜んでくれた。
そういうことで僕は大丈夫だったけど、ヤンキーがたくさんいるので、たまにヤンキー同士で小競り合いがあった。だからなのか、先生は強面が多かった。
僕の担当教官は金縁のティアドロップサングラスをかけた鬼教官だった。

見かけが怖ければ、大抵中身も怖いものだ。教官は本当に怖かった。前の教習を受けた女の子が、泣きながら車から出てきたことがあった。口数が少なく、威圧的なのだ。

行け

止めろ

曲がれ

これだけで講習が終わるくらい。口数が少なかった。

ようやく僕は仮免になり、路上講習に出た。
もちろん、車内では先生と二人っきりだ。
田舎なので、とても静かだ。
カーラジオなどつけたら、速攻教習所に戻されるだろう。
無言の時間が続く。間が持たない。
信号待ちの時、なんとか間を持たせようと思った。
……なんか言わなきゃ。
西日が顔に当たり、まぶしかった。
先生をちらと見ると、サングラスをかけているせいか、なんともないようだった。

つい、思いついたことを口走った。

先生、松方弘樹に似てますよね

ああん?

……

……

……(あれ?)

もういっぺん、言うてみい

(……やばい)

なんちゅうた?

ま、松方弘樹に似てますよね……

完全に怒らせてしまった。
そのサングラスは「渡哲也派だったのか」と、恐る恐る先生を見ると、

ものすごい笑顔だった。サングラスをかけていてもそれはわかった。

つまり、俺はドンピシャを言い当てたのだ。

その後、

わしを誰かに似ているといっとったの。ありゃ、誰だったかの?

今日もわしは松方弘樹さんに似とるかの?

どれくらい似とるかの?

と、言われ続けた。
それはよかったけど、運転中ずっと松方弘樹伝説を聞かされたのは困った。

ただ、先生の機嫌が良くなり、場が楽しいと運転も緊張しなくなった。
おかげで免許がスムーズに取れました。

いつか本物の松方さんにお目にかかったら、お礼を言おうと思っていました。それは叶いませんでした。


gogomon
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