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下敷きの葬式。

by gogomon

内田裕也が「ロックンロールに犯された」ように、僕らの世代の男子は皆、ガンダムに犯された。
それは熱病のようなもので、ア・バオア・クー陥落と共に、その熱は冷めていった。
多くはほかのアニメに移行した。

僕は筒井康隆と手塚治虫に傾倒していったので、ジャンプやほかのアニメといった針路は取らなかったが、T君はマクロスにはまっていった。その頃から、T君は太り始めた。

いまでもあるかわからないが、当時は下敷きという文具があった。
あれはいまだになんで必要だったのかわからない。

T子供でも気軽に買うことができる価格の下敷きは、ある種アイデンティティを発露する場で、女子の多くはアイドル、男子は阪神タイガースの選手の下敷きを持っていた。

だがT君だけは、髪の毛が緑色の女の子の絵の下敷きだった。
アニメに出てくる女の子なのだそうだ。
どうして掛布じゃないのか。
なぜバースじゃないのか。
百歩譲って薬師丸ひろ子じゃないか。

今思えば、おそらくT君は初期の二次元オタクだったのだろう。
子供は理解できないものは拒む。どうも気持ち悪いので、皆で緑色の女の子の顔をライターで焼いて変形させたら、烈火のごとく怒った。
おとなしいT君だが、太っており、小学生の喧嘩はウエイトが結構な武器になる。
僕は案内激怒する肥満の小学生をあれ以来見たことがない。
僕たちは暴れるT君に謝り、なだめ、皆で弁償をすることになった。

その下敷きは「かわいそうだから」というT君の願いで、木の根元に穴を掘って埋めて供養することにした。
ひとり、念仏を唱えることができるやつがいたので供養はそいつが取り仕切った。
いくら小学生でも、プラスチックの下敷きを埋めるなんて馬鹿馬鹿しいと思ったが、肩をふるわして泣くT君にそんなことは言えなかった。
本当に申し訳ないことをしたなあと思ったが、やっぱり僕は下敷きは掛布が良かった。

後にT君は実家を継ぎ、会社の社長になった。中学に入ると疎遠になった。仲良くしておけば良かった。


gogomon
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