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マイク・タイソンが越してきた。

by gogomon

中学の頃、マイク・タイソンみたいな奴が転校してきた。
頬に刃物でできた傷があり、腕が女子の足くらい太かった。
野生的な恐ろしさがあった。
担任が「●●(名前がどうしても思い出せない)、みんなに挨拶して」と言ってもひと言も話さなかった。
関わりたくないなあと思っていると、担任は僕を見て「井上、面倒見ろ」と言った。
隣の席が空いていたのだ。

驚いたことに、そいつは手ぶらで転校してきた。
教科書も無ければ、鉛筆もない。
僕はやさしく接した。教科書を半分見せ、ノートをちぎって、鉛筆を1本あげた。
●●はぺこりと頭を下げた。見た目は怖いけれど、いい奴なんだなと思った。

が、休み時間には自己紹介をしないことをからかった2人を肘鉄で倒していた。
秒殺だった。やっぱり、人は見かけと比例するのだ。

いろんな噂が飛び交った。
暴力事件で一年少年院に入っている。
母親がやくざ(母親というのが怖い)。
野球が滅茶苦茶うまい、手を守るために絶対に喧嘩では殴らない……などなど。
ほとんど口をきかないので、事実は確認できなかったけれど、野球がうまいのは本当で、プロのスカウトが目を付けていると野球部の顧問が言っていた。
しかし、●●はすぐに学校には来なくなった。と、同時にプロの道は絶たれてしまった。

高校生の頃、町を歩いているとチンピラがニコニコしながら近づいてきた。
やだなあと思っていると、●●だった。

傍らに金髪の女と小さ女の子がいた。
「これ、井上。いい奴。鉛筆くれてん」と紹介された。
金髪の女が「どうも、お世話になってます」と笑った。
歯がほとんど無かったがいい人そうだった。
「なんか食うか?おごるで」と言われたが、いまから塾やねんと嘘をついた。
「そうか」と、そのまま別れた。少しだけ、寂しそうな顔をした。
嘘はきっと、ばれていたと思う。


gogomon
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